キノコやカビなどの菌類から、栄養を奪い、光合成をやめた植物
現在、神戸大学の末次健司先生と菌従属栄養植物図鑑を計画中です。菌従属栄養植物図鑑を作るために、多くの方の助けを得ながら、日本各地で菌従属栄養植物の撮影を進めています。
菌従属栄養植物とは、キノコやカビなどの菌類から、栄養を奪い、光合成をやめてしまった植物のことです。よく見かける菌従属栄養植物のひとつはギンリョウソウです。光合成をしないので、植物に葉緑素はなく、全体に半透明の白色で、葉も退化しています。これ以外にもツチアケビなどの葉がないランもあります。ムヨウランなど、ラン科に多い菌従属栄養植物ですが、ラン科、ホンゴウソウ科、ツツジ科、ヒナノシャクジョウソウ科など、多くの科に菌従属栄養植物があり、別々の進化の結果菌従属栄養植物となったと考えられます。
菌に栄養を依存して光合成をしないという生活スタイルから、菌従属栄養植物の多くは植物らしくないルックスをしています。大体じめじめして、やぶ蚊が多いような場所を好み、ヤツシロラン属の植物のようにキノコに擬態している菌従属栄養植物もあります。とにかく珍奇な植物が多いのが、この菌従属栄養植物です。
目立たない植物が多いため、日本の植物にしては珍しく、まだまだ新発見があり、新種、新属の発見が盛んにおこなわれています。「菌従属栄養植物図鑑」を一緒に計画している神戸大学の末次健司先生は、菌従属栄養植物の新種の発表を多く行っています。さらに生態もおもしろいものが多く、まだまだ知られていないことがたくさんあります。まさに発見と冒険が菌従属栄養植物の世界にはあるのです。
菌従属栄養植物は、以前「腐生植物」と呼ばれていたものが多いですが、腐ったものから栄養を取っているわけではなく、菌類から栄養を奪っているので「腐生植物」といういい方は現在ほとんど使われなくなっています。
全体に小さなものが多く、撮影は非常に困難です。そもそも、数も少ないものも多く、見つけるだけでも難易度が非常に高い植物です。しかしながら、その形や生態は変化に富んでおり、非常に面白いものばかりです。今も、菌従属栄養植物撮影のための機材を考え、充実させながら撮影に向かっています。
菌従属栄養植物の撮影で最も重要だと考えられるのが、菌従属栄養植物の保護です。もともと個体数が少ない希少な植物が多いだけでなく、落ち葉や土の中に住む菌から栄養をもらっているために、周辺の踏みつけに非常に弱く炒め煮最新の注意をしながらの撮影が必要です。落ち葉一枚でも、その環境に必要な場合もあります。私は撮影には環境を乱さないように注意しています。
多くの人が見に行くだけで、絶滅してしまう植物も多いのです。しかし、菌従属栄養植物の事をまったく知らなければ、保護することもできません。保護を最優先課題としながら、多くの方に菌従属栄養植物の面白さを伝えるという難しいバランスをとる必要があります。
「菌従属栄養植物図鑑」を作るにはまだまだ、時間がかかりそうです。皆様のご協力をぜひお願い申し上げます。