リヒターズフェルトへ南アフリカの植物

花畑を抜けて、砂漠へ向かう

 丸二日間の南アフリカのナマクワランドでの植物撮影をしました。本当はまだまだ足りず、あと何日間も撮影したかったのですが、もっと奥、南アフリカ西海岸最北部のナミビアへの国境付近にあるリヒターズフェルトという砂漠地帯へ行くには、そろそろ出発しないと間に合いません。そこで、後ろ髪をひかれながらも出発することにしました。

 スプリングボックの街には3泊しました。小さな町なので、スーパーがふたつほど。ガソリンスタンドは4つ。同じガソリンスタンドで、何度もガソリンを入れているのでなじみになりました。朝、ガソリンを満タンにします。なぜならリヒターズフェルトは人がほとんどいない砂漠の中。食べ物も飲み物も、買えないので、すべてを出発前に用意しなければならないのです。

 出発する前日の夕方に、本当は買い出しを済ましたかったのですが、前日は土曜日だったために、買い出しに行った夕方にはもう店が閉まっていました。時間の無駄になってしまいますが、出発の朝にスーパーマーケットに行くことになりました。特に水は大量に必要です。20リットル以上のミネラルウォーターや飲用水も必要です。砂漠の中で車が壊れ助けがなくても、2日間くらいは問題なく生きていける程度の水の量を計算しています。

 出発の朝に買い物をするとは、無駄な時間のように思いましたが、実はこのことが新しい出会いのチャンスができたのです。

不思議な出会い

 スーパーマーケットでレジに向かっていると、「こんにちは、日本の方ですか?」と声をかけられました。外国で声をかけられる、特に日本語で声をかけられるのは、詐欺師や押し付けガイドのような場合が多いので、恐る恐る振り返ると、優しそうな男性がそこに立っていました。なんとなく見たことがあるような・・・。「ちょっとお話いいですか?」と言って、彼は英語と日本語混じりで話しはじめました。彼と話をしていると、空手家でもあるとのこと。

「もしかしてコンラッドさんですか?」と私が聞くと、驚いた顔をして「そうですコンラッドです。」とのこと。なんと、彼は私が今回参考にしてきた本「カラー版 世界の四大花園を行く-砂漠が生み出す奇跡(中公新書)野村哲也著」という本に載っている方だったのです。

 コンラッドさんは、スプリングボックのゲストハウスのオーナーで、植物に詳しい方でした。私が「今年どこか花がいい場所ありますか?」と聞くと、リヒターズフェルトに行く途中でおすすめコースを教えてくれました。しかし、車で走るにはかなりの悪路のようです。

 スーパーマーケットでお礼を言って、コンラッドさんにお別れをして、おすすめコースに行ってみることにしました。しかし、このコースは時間がかかるので、そこがちょっと心配です。

砂漠を走る

 カーナビと地図を頼りに出発します。砂漠に入り、国道を離れ、未舗装路に入っていきます。延々と続く土のガタガタ道。いくら走ってもガタガタ道と、景色は地平線と砂漠。時々岩山が近づきます。

 何時まで走っても続く長い未舗装路。未舗装路は路面に注意が必要なので、ものすごく疲れます。ガタガタガタ延々と続く振動も疲れます。時々出てくる花だけが、疲れを癒してくれます。

砂漠の道が続きます。
なるべくガタガタしないルートを通るために
コースは数cm単位で選択します。
たまに須永積もっている場所もあるし、
丸1日の運転は疲れます。
ガタガタガタガタ。
まったく花がないような砂漠だが、
車を停めて、砂漠をよく見ると、
砂漠の中にも
こんな小さな花も咲いています。
テヌイフォーリア・ガザニア
(Gazania tenuifolia)
キク科ガザニア属

頭花の直径は1~2cmしかない
小さい植物。
地面を伏せるように生える。
葉は細く、魚の骨のように分岐する。
周りの石英の砂との大きさを
比べて見て下さい。
石英が多いのが
この砂漠の特徴のひとつ。
花の内側のこげ茶色の部分にある
白い点は蜜腺ではなく
ただの模様です。
ぺス-カプラエ・カタバミ
(Oxalis pes-caprae)

リヒターズフェルトは、
暑く乾燥しているために、
葉は少し厚い。
さらに乾燥しないように、
気孔を露出しないように、
葉の裏側を出さないように閉じている。
ケープタウンからナミビアに生える。
この花は高さ3㎝だが、
40cm程度にまでなる。


つづく。