途上の旅 若菜晃子著

本の紹介 途上の旅 若菜晃子著 アノニマスタジオ 2021年

 尊敬する作家の若菜晃子さんの新刊です。ステキな装丁で、手に取るだけでうれしい本です。

 以前も紹介した若菜晃子さんの著書「旅の断片」に続く、旅シリーズの第2弾になります。今回のテーマは旅の自然。スリランカでクジャクの鳴き声を聞いたり、カナダで山歩きをしたり、ケニアでアフリカゾウを見たり、タイでスイレンに囲まれたり。ヒマヤラをトレッキングしてシャクナゲの森を歩き、サハラ砂漠でラクダの背中に揺られたり、インドで石を拾ったり、くれた島でチューリップを見たり・・・。若菜晃子さんて、変な旅が好きな方ですね。観光はまったくありません。ただただ旅の本なのです。

 サスカツーンパイやヤクのチーズ、チリのパンなど食べ物の話もあります。どれもが若菜さんが旅で見て感じたことを、読みやすく、丁寧な文章で書かれています。文章を読んでいるだけなの、その光景が頭に浮かぶところが若菜さんの文章のうまさなのでしょう。私にはとてもマネができません。

 ひとつひとつの文章は短いですが、なぜかしんみりしたり、思わず笑ったり、へえええ~っと思ったり。気が付くと、読んでいるだけで一緒に旅をしているような気分になります。人のやさしさがいっぱい詰まっているので、読んだら幸せな気分になりました。

 自然への観察眼が鋭いのには驚かされます、クジャクの眼つきや目玉の色まで詳しく観察しています。ひとたび生き物に興味を持つと、まったく飽きることがなく、しつこく観察している様子が字間から浮かび上がってきます。

 若菜晃子さんの本にはよくあるのですが、胸がキュッとなるような、昔昔のとおい記憶に触るような描写が隠されていて、しゅんとしたるすることもあります。

 若菜晃子さんの新作、「途上の旅」アノニマスタジオ・KTC中央出版、おすすめの本です。

「途上の旅」若菜晃子著
アノニマスタジオ
「人は常に地上における一点である」
いい言葉ですね

イラストも若菜さんが書いています