ラン科 ボウラン属 ボウラン
ボウランは漢字で書くと棒蘭です。葉も茎も、箸のような太さの棒のようなので、この名になったようです。大きな木に着生しており、常に乾燥に耐えるため、水分を多く蓄えられる形になったのでしょう。茎も葉も緑色をした多肉植物です。園芸目的のために盗掘されることが多く、花を近くで見られることは、なかなかありません。
ボウランという植物は前から知っていたのですが、最近ボウランについておもしろい記事を読んで、すごくボウランの花を見たくなりました。それは、ボウランがリュウキュウツヤハナムグリという甲虫の雄に花粉を運ばせているという記事でした。花粉を運ばせるために、なんとボウランはリュウキュウツヤハナムグリの雌の出す、フェロモン(性的香り)とほとんど同じ物質を作っていたということです。花の形もリュキュウツヤハナムグリの雌を思わすような形ということですが、実際見ましたたが、あまりハナムグリっぽくはなかったですが・・・。
リュウキュウツヤハナムグリはボウランの出す、性的に成熟したリュウキュウツヤハナムグリの雌の匂いと花の形に騙されてボウランの花にやってきて、ボウランの花にある花蜜を発見して舐めるために頭を突っ込んだところで、花粉の塊を付けられて、また飛んでいき、別のボウランの雌しべに花粉を付けるというシステムをボウランは構築したのです。ボウランはリュウキュウツヤハナムグリ雄の性欲と食欲とのふたつの方法で花粉を受粉しているのですが、性欲については匂いと形で騙し、食欲については花蜜を与える共生の方向で行っています。いやあ、本当に複雑でおもしろいですね。
ボウランは南西諸島だけでなく、紀伊半島、四国、九州などに分布しています。しかしながら、リュウキュウツヤハナムグリは九州や四国、紀伊半島には分布していません。仕方がなく、九州や四国、紀伊半島のボウランはカナブンやハナムグリなどのほかの甲虫に花粉を運ばせているようです。ボウランも必死ですね。
さて、2023年6月、ボウランの撮影のために、霧島でキリシマギンリョウソウを撮影した後、鹿児島県を南に向かいボウランの生えている場所に行きました。あまり花付きがよくなかったのですが、ひとつだけ何とか撮影できる位置にボウランの花がありました。バニラのような強烈に甘い香りが漂っています。「これが、リュウキュウツヤハナムグリの雌の香かあ」と思いました。花はあまりよい状態ではなかったですが、香りだけは強烈でした。アリが頑張って蜜を舐めていましたが、ハナムグリは飛んできませんでした。