「旅の断片 若菜晃子」 アノニマ・スタジオ

旅の随筆

 尊敬する作家である若菜晃子さんの新しい本が出版されました。それがこの「旅の断片」です。出版はアノニマ・スタジオ。

 旅の随筆集です。今回の旅先はイギリス、ポルトガル、スペイン、ポルトガル、スイス、ギリシャ、キプロス、アラブ首長国連邦、インド、スリランカ、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、台湾、ロシア・サハリン島、ニューカレドニア、カナダ、メキシコ、チリ。ずいぶんたくさん行ってますね。

 旅のガイドではありません。若菜さんが旅で考えたこと、発見したこと、感じたこと。自然と街のあいだで出会った人々との出会いや、生き物との出会い。そこに生きる人々の、歴史書には書かれていない歴史。文化、伝統、食べ物や民芸品。このようなただの旅行書にはない深い思索と民俗学が、やさしい言葉で書かれています。

 ニューカレドニアではフランスパンを思い、インドネシアのジャワ島のジャングルを歩き、キプロス島では壺つくりの工房に入り、サハリンでは琥珀を子供からもらい、タイでは海に潜り、スリランカでは女学校の100周年記念にパーティに紛れ込み、ドバイではおばさんの服選びに付き合わされ・・・。若菜さんの旅はほんとうにいろいろなことが起こるのです。

 心にしみこむような文章は短いものばかりです。何度も繰り返されて、旅は際限なく続くようです。読んでいると、スマトラ島の夜の湿度が高く暖かい夜の空気が感じられます。ゆっくり、真剣に読んでいけば、旅に出ているような臨場感を感じることができるでしょう。いい本です。

旅の断片 若菜晃子