シモツケコウホネ 里の植物

スイレン科 コウホネ属 シモツケコウホネ

 シモツケコウホネは、以前からぜひ見てみたい植物のひとつでした。栃木県でしか見ることができない、シモツケコウホネはとても珍しい植物なのです。

 シモツケコウホネは、つい最近発見された植物です。発表されたのが2005年(07年?)、つまり、ほんの15年前に発見された植物なのです。西表島などの離島ならともかく、栃木県で近くに電車も通っているような田んぼ脇の用水路に生えている植物が新種だった、というのはなかなか感動的です。植物の世界にはまだまだ発見があるのです。

 シモツケコウホネの特徴は、その葉にあります。葉が水中葉だけで、浮葉も水上葉も見られないのが特徴です。水中用は赤紫色。花は黄色で直径2~3cm。雌しべの先端部分の柱頭板は赤みを帯びます。シモツケコウホネは花茎が太くて強いのも特徴のひとつです。

 コウホネ属の植物は似ていて見分けにくいのですが、葉の形と雌しべの色がポイントです。コウホネは雌しべは黄色で水上葉があります。水上葉の長さは20~50cm。ヒメコウホネは水上葉と浮葉があり、葉は全体に丸いです。オグラコウホネは浮葉があり葉は広卵型をしています。ナガレコウホネというコウホネとシモツケコウホネの雑種もあるようで、とにかくややこしいですね。

 シモツケコウホネは漢字で書けば下野川骨。下野(シモツケ)とは、ほぼ今の栃木県の事です。川骨(コウホネ)は、コウホネの根茎が太くてごつごつしていて、まるで脊骨のように見えるから。栃木県で見つかったコウホネだからシモツケコウホネなのです。植物でよくあるのは、発見された場所の名前が付いたものの、あとから他の場所でも見つかってしまい、名前と自生地が乖離することです。しかし、シモツケコウホネは今でも栃木県でしか見つかっていません。

どうして、シモツケコウホネは栃木県だけに生えているのでしょうか。それは、まだ解明されていません。自生地は栃木県内の遠く離れた場所に3~4か所あるだけです。シモツケコウホネは水に恵まれている場所を好むようですが、でもそれならほかのエリアでも同じような場所がたくさんあります。しかし、水がきれいで、水量が一年中安定していて、暑すぎも寒すぎもしない、日当たりのよい場所となると少ないと思います。もともと、もっとたくさん自生地があったのに、開発でたまたま栃木県の一部だけに分断されて残ったのかもしれません。種子の散布方法も知りたいところですね。

シモツケコウホネ
Nuphar  Submersa)
あまりにほかのコウホネと違うために、
変種とかではなく、種として独立しています
こんな小さな小川が自生地です
流れが強く、水は透明できれいです
水上葉がないので花だけが水面に飛び出します。


OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
OLYMPUS  M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

シモツケコウホネ
蕾も小さいうちは水中ですが、
大きくなるに合わせて水上に出てきます
4弁~5弁の花が多いようでした。
流れが強くても、
シモツケコウホネの花茎は
強く水流に負けないように伸びています。
種子になると水中に戻ります

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
KIPON アダプター
 TAMRON SP AF 180mm F/3.5 Di LD [IF] MACRO 1:1 (Model B01)
シモツケコウホネ
花弁は4枚
雌しべの先端が赤みを帯びています。
葯が赤褐色で、花粉は黄色

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
OLYMPUS  M.ZUIKO 60mm マクロ F2.8
シモツケコウホネの水中葉
紅色を帯びています
流れが強いので、ずっとひらひらひらひら動いています
葉は薄いです
TG-4で水中写真に挑戦しました。
Rawで撮ってホワイトバランスを調整しています。
水がきれいです。

OLYMPUS TG-4