東京甘味食堂 若菜晃子 講談社文庫

よい本を読みませんか

 外に出ることが難しい状況です。私は日ごろから本を読むのが好きなので、いつも読んでいますが、こんな時は家でもっと本を読んでいたいです。仕事なんかしないで。

 さて、新刊の紹介です。尊敬する著者の若菜晃子さんの本です。「東京甘味食堂」。あれ、聞いたことがあるぞ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、その通り、2016年に本の雑誌社から刊行されたものを、講談社文庫から出版したものです。2020年4月15日発売。文庫本なので定価も680円と入手しやすいです。文庫ですが、案外、文字が大きくて読みやすいです。

 「東京甘味食堂」は読みやすく優しい文体で、甘味食堂に入って食べたときのことが書かれています。とは言ってもグルメ本ではありませんから、食べ物が主役ではありません。過去の思い出や、人間の優しさ、時間に裏打ちされた美しい所作、おいしい食べ物に対する情熱。これらをやさしい文に包んだ、おいしい甘味を食べるような本です。

 東京都内60軒の甘味食堂をめぐっています。みっちりと文章が詰まっています。以前も読み、また読み返していますが、やはりいいですね。幸せな気分に浸りました。

 今は外に出て、お店に入って食事を楽しんだり、おしゃべりしたりするこてはできませんが、この本を読むと、お店に入って、甘いものやおうどんを食べているような世界に入り込めます。テレビや動画のように視覚と音声を押し付けられるのではなく、文字を読むことで自分のペースで、頭の中で味や、香り、ゆっくりした店の雰囲気、そんなことが浮かんでくるのです。本はいいなあ。イラストもいいです。

「甘味食堂とは、あんみつやおしるこなどの甘いものと、おいなりやおうどんなどの軽食と、どちらも置いているお店のこと。」

東京甘味食堂
若菜晃子著
講談社文庫

ほっとひといき甘いもの