サトイモ科 ザゼンソウ属 ヒメザゼンソウ
狭山丘陵でぜひ見ないといけない植物が、このヒメザゼンソウです。日本全体でもなかなか見るのが難しい植物なのです。ヒメザゼンソウを関東地方で簡単に見ようと思うと、私はここ狭山丘陵くらいしか知りません。
ヒメザゼンソウの花はとても小さな花です。小指の第一関節くらいのサイズしかありません。藪の中で咲いていても、まず見つかることはありません。
ヒメザゼンソウの花の形はザゼンソウとあまり変わりません。ヒメザゼンソウは初夏に花が咲くのは、冬から早春に開花するザゼンソウとの大きな違いです。ザゼンソウは花の時期にはまだ葉が展開していません。
ヒメザゼンソウも花の時期に葉がありません。ヒメザゼンソウの葉はどうなっているのでしょうか。実は、ヒメザゼンソウは、春にまず葉を展開させるのです。そして初夏にはその葉は枯れて腐ってしまい、花だけが咲く、といったことなのです。サトイモ科ですから地中に芋があり、エネルギーをためているのでしょう。
ヒメザゼンソウの葉も低くしか伸びません。初夏になると木々や背の高い草がが茂り、光合成をおこないにくくなります。そうなるとヒメザゼンソウにとっては、光合成によってエネルギーを生成するよりも、むしろ呼吸によるエネルギー消費のほうが大きくなってしまうので、葉を枯らし夏眠したほうがよいのでしょう。しかし春は、花粉を媒介する昆虫が少ないために、昆虫の多い初夏に花を咲かせるという、葉と花を時間差で使い分けているのです。サトイモ科で地中に栄養をたっぷり蓄えられる芋がある、ヒメザゼンソウならではの、よく考えられた作戦ですね。